はたらく人たち

はたらく人たち。『生徒』

荒井学園は教員、一般職員、生徒など、多くの人で成り立っています。荒井学園を構成する人達、つまり、様々な立ち位置にいる「人」が、どのように自分自身の人生と学園を結びつけているのか、テーマに沿って話していただきます。
今回は「生徒」について、座談会形式でお話を伺いました。

「生徒とのかかわり方ってどんな感じですか?」の回

人生の通り道で、ここに辿り着いたという縁がある。

樋口達也(新川高校) 生物担当の27歳。eスポーツ部顧問。
纓田(おだ)圭子(高岡向陵高校) 専任スクールカウンセラー。
藤根勝利 (高岡向陵高校) 地歴公民担当の28歳。サッカー部顧問。

今、学園にはどのような生徒がいますか?

樋口 クラス、部活動など、対人関係に不安を抱えていたけれども、高校で変わりたいとの思いで通ってくれている子が多い印象はあります。例えば部活ですと、その子がeスポーツという集団の中で生きていくために、場を作ってあげることが大事だと思うんです。僕にできることももちろんあるのですが、生徒の集団に入れてあげる方が上手くいくなと。生徒自身が部の運営や集団の作り方を学んでいけるように、場を作ることが必要な支援かなと模索しながらやっています。


纓田 凸凹があったり、いろいろな問題を抱えて不安を感じていたり、経験値が少ないけれど、高校には行きたいし、もう一度ここで頑張ってみたいという気持ちでやってくる生徒もいます。言われるままにくる生徒もいます。目標を持ってくる生徒もいます。個性の強い生徒もいます。様々ですね。
感覚過敏で、音が苦手な生徒には「イヤーマフや耳栓をしてもいいよ」と言っています。体育館で集団が苦手な生徒には、「一度外に出て、入り口で話を聞いてみよう」などの工夫をします。「このタイミングで戻れる」って、先生もちょっと離れたところから見ていらっしゃる。先生方はとても柔軟に対応していらっしゃると思いますね。
入学式の前には担任の先生と保護者の方と生徒の相談会を行います。「自分はこうなんだ」とか、「こういう経緯で来ているんだ」とお話しされますし、担任の先生と把握したことを共有しています。


藤根 クラスや部活の他に生徒会の担当をしているので、行事で生徒と触れ合う機会があります。この数年で周りの目を気にして空気を読む子が増えてきたと感じています。反面、主体的に活動がしたい意志を持って動く子が少なくなってきた印象がありますね。日々の授業や授業態度も年々とても良くなっています。黙々とやれる子が増えてはいますが、授業という枠組みを外した活動となると中々盛り上がらなかったり、前に出てこられない生徒たちが多いのかなと。ここ数年のコロナ禍で中学時代を過ごした生徒たちには、そのような課外活動の経験が少ないという背景がありますね。

常に挑戦している荒井学園ですが、生徒たちにそれが直結する感覚はありますか?

纓田 真面目な生徒が多いです。最近の子達って割と言われたことを素直にやるんですよね。いろんな知識も情報も入る社会ですから、おとなしい生徒も、SNS ではものすごく繋がっているんですよね。だから自分の好きなことを持っている生徒はたくさんいますし、おとなしくても「聞いて聞いて」っていう生徒は多いかな。

どのようにその言葉を引き出されているのでしょうか?

纓田 信頼関係がないと、人は話をしないので、横にいることから始めます。それが何かしらのきっかけにはなるんですよね。「こういうことが好きなの?」って聞いたら、話し始めることもありますね。
eスポーツの話じゃないですけど、やめていった生徒の中にもゲームを生業にしている人や、独自の世界を持ってちゃんとやっている人たちもいます。それが中々学校の枠には嵌まらなかった生徒たちですけど、承認してくれる人がいるかいないかの話なのかな、と。

教員と生徒。同じ人間としてどうかかわっていこうと思われますか?

藤根 僕は生徒とそんなに歳が離れているわけではないので、一緒やっていくのが一番いいかなと思っています。イメージとしては、サポーターのような大人でありたいなと。先程の纓田先生の信頼関係という言葉にも表れていますが、こちらが心を開かないと子ども達は絶対に心を開いてくれない。まず本音で語り合える関係を作ることが一番大事だと思います。行事を通じて日頃見られない部分にしっかり着目し、見落とさずに観察してあげること。そんな積み重ねが関係作りに繋がると思うので、特別活動を大切にしていきたいですね。

樋口 「信頼関係」の他に、生徒達とかかわっていく上で大切なのが「共感」だと思います。なかなか難しい子達に対しては、懐への踏み込み方をいつも探り探りやっています。自分が趣味のことを一笑懸命話したりすると、相手も「近いな」とか「この人すごく楽しそうに喋っているな」と感じてくれるのか、結構喋ってくれることが多くて。自分が全く知らないことでも、生徒が話してくれたら目の前で携帯で調べたり、どんなことに対しても「共感を示す」ことがとても大事なんじゃないかなと思います。
共感の根底にあるのは「誰かが見てくれている」ということ。俗にいうと承認欲求っていうものを、彼らは欲しているのかなと感じることがあります。学校や自分が属しているコミュニティの中でそれが満たせない子は、どこかで発散しなきゃいけない。それがSNS だったりするわけです。承認欲求を満たすために共感を示しているわけではないですが、学校の中でも、相手に共感を示して認めるという流れはすごく大事になってきているんじゃないかなと。

纓田 人生長い中で「自分はダメだ。もう無理だ。やめた」って諦めている子もいる。ただこうやって縁があって高岡向陵高校や新川高校に来て。その中で素晴らしい先生や友人に学校で「出会う」ことってあると思うんですよ。そういう人に出会って「自分もこんなことをやってみたい」とか「自分もこういうことができるのか」とかね。
私は、無理をしてほしくはないんです。わからないものはわからないし、次はこうだっていう風に決まったものでもないので、何かきっかけみたいなものを吸収してくれればいいのかな、と。それが将来に繋がっていくのかなと思いますし。「なんでこんな高校来たんやー」って感じで卒業していった生徒たちが結構顔を見せに来るんですよ(一同爆笑)。退学したけど頻繁に遊びに来る人達もいるのでね(笑)。きっとこの学校には、何かあるんですよね。
卒業してちゃんと就職した生徒の中にも、何年後かに悩みの電話がくることもあります。失敗や苦しいことってこれからもあることだろうし。
ただ、高校は人生の中の通り道であって、「こうしなくてはいけない」とカチカチにならず、ひとつの出会いや、ひとつのきっかけを見つけてくれればいいのかな、と。それが次に繋がるのかな。
しかしながら「ダメなことはやっぱりダメ」って言ってあげないと何でもOKになってしまうので指摘してあげることも大事ですね。たまにね「私カウンセラーだけど、一人の纓田(おだ)圭子として言うからワーク置いて」ってこともあるので(笑)。これからの人生に繋がっていくひとつのきっかけのようなものに出会えるように心がけています。

TOP